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自覚者達の芸道

島 青櫻

はじめに

 「自覚者達の芸道」は、「只中の詩境の創作」をサブタイトルとする詩作につての思索の著述です。

 著述の発端は、芭蕉の「笈の小文」の件、「西行の和歌における、宗祇の連歌における、雪舟の絵における、利休が茶における、その貫道するものは一なり」にあります。この件には「世阿弥の能における」の文言が見当たりません。芭蕉が挙げた四名の芸道者は、いずれも日本の芸道史において冠たる芸道を打ち立てた者達といえます。また、言う迄もなく、世阿弥は能楽を大成した芸道者、であれば当然「世阿弥における能」の文言があって然るべき、といえます。何故、芭蕉は世阿弥の名を挙げなかったのか、この素朴な疑問が、本著述の端緒であります。

 著述の構成は、壱 「芭蕉の俳諧」、弐 「世阿弥の能」、参 「自覚の光景と営為」の三部から成ります。壱の「芭蕉の俳諧」では、「笈の小文」に芭蕉が挙げた四名の芸道者の芸の本質を尋ね、芭蕉の芸との共通性を探ります。弐の「世阿弥の能」では、世阿弥の能の本質を尋ね、探求するとともに、芭蕉の俳諧との共通性と差異性を究明いたします。参の「自覚の光景と営為」では、芭蕉と芭蕉が挙げた四名の芸道、そして世阿弥の芸道を貫道する一なるものとは何かを解き明かします。

 著述の方法は、自書『詩のアディスィ』で培った詩的論理に基づく記述、すなわち内在的直観に基づく表現に依るものであります。簡単にいえば、ロゴス(Logos)に依る科学的論述ではなく、ミュトス(Mythos)に依る詩的論述、といえます。

 著述の行程は、一回当たり平均6,600字前後の文章を月一回、都合24箇月の連載となります。


目次

壱 芭蕉の俳諧

  • 1―芭蕉の命題
  • 2―芸道者の共通資性
  • 3―和歌における西行
  • 4―連歌における宗祇
  • 5―絵における雪舟
  • 6―茶における利休
  • 7―心法に基づく真の営み
  • 8―自覚者の根本資質

弐 世阿弥の能

  • 1―能における世阿弥
  • 2―世阿弥の資質
  • 3―世阿弥の芸道
  • 4―世阿弥能の特異性
  • 5―遊行的芸道と道行的芸道

参 自覚の光景と営為

  • 1―私意と誠意
  • 2―自覚の光景
  • 3―詩の仕組

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