【季語の意味と使い方】映画と音楽タイトルにある季節の表現
「季語」とは日本の季節を感じさせる言葉であり、映画や音楽のタイトルにもよく使われています。このページでは、実際に映画や音楽のタイトルに使われている季語を抜き出し、季語の意味や使い方、さらには季語を取り入れた美しい例句をご紹介します。
作品に季節感をプラスするヒントが満載ですのでぜひ参考にしてみてください。
秋刀魚の味
公開年:1962年 監督:小津安二郎
出演:岩下志麻、笠智衆、佐田啓二
季語
秋刀魚(秋の季語)
秋刀魚は9月から10月が食べごろ。
残暑が去り、秋も深まり、一年で最も五感の鋭くなる時期に、味覚を楽しませてくれるものの代表。
例句
- 三尾みな同じ方むけ秋刀魚焼く
齋藤朝比古(『累日』より) - 思ひ出し笑ひ秋刀魚の煙り中
石寒太(『翔』より)
季語の解説
秋刀魚といえば塩焼き。そのためか、焼く場面を句にすることが多く、「秋刀魚焼く」と5音にして、これを上五か下五に置いた句がよく見られます。石寒太の句は、「焼く」とは言わずに焼いている場面を読者に想像させる、そういう句です。秋の味覚の代表ですが、俳句の題材としてはもちろん、焼くこと食べることに限定されるものではありません。
ギターを持った渡り鳥
小林旭 発売日:1959年10月20日
作詞:西沢爽 作曲:狛林正一
季語
渡り鳥(秋の季語)
越冬のために、秋、北方から日本に渡ってくる鳥のこと。
秋と限定するため、逆に、燕のような、春に南方から渡ってくる鳥は、これに含めない。
具体的には、鴨、雁、白鳥、鶴、
これらの鳥の、群れをなして渡ってくる光景に、季節の移り変わりをしみじみと感じる点がポイント。
また、
例句
- 方形の空の一辺鳥わたる
石寒太(『翔』より) - 鳥渡るオーケストラの音合はせ
柏柳明子(『揮発』より) - 間取図のコピーのコピー小鳥来る
岡田由季(『犬の眉』より) - 生も死もたつた一文字小鳥来る
石寒太(『生還す』より)
季語の解説
「鳥」そのものよりも、「渡り」に注目することの方が多く、「鳥渡る」のかたちが好んで使われます。
ちなみに、「鴨」「白鳥」「鶴」それ自体は冬の季語、「雁」「
石寒太の句の「方形の空」は都会のビルの谷間から見た空で、そんな都会の空を鳥が渡っていく、それを見た感動が詠まれています。
柏柳明子の句は、大勢で一つの演奏へと向かう音合わせの作業に、鳥が越冬地へ心を合わせて渡っていく情景を重ねています。
小鳥は身近なところで観察されるため、「小鳥来る」はたいへん使いやすい季語です。
単に「小鳥」だけでも季語(秋)になりますので、それに「来る」をあえて付けるのであれば、季節が巡って最初にそれらの小鳥と出会ったことの喜びに、重点を置いて詠みたいところです。