俳句の添削で上達!
魅力的な句に仕上げるコツとポイントを解説
俳句をもっと魅力的に詠みたいと思いませんか?
ちょっとしたポイントや言葉の工夫で、句の印象は大きく変わります。
このページでは、俳句の改善ポイントや表現を磨くコツを分かりやすく解説しています。
より伝わる、魅力的な俳句を作るためのヒントをぜひ参考にしてください。
添削者
石寒太 — 俳句結社『炎環』主宰
1988年に「心語一如」を掲げて俳句誌『炎環』を創刊・主宰。
俳句大会の審査員やNHKカルチャー俳句教室の講師も務め、句集『あるき神』『愛句遠景』など著書も多数。
さらに詳しいプロフィールはこちらからご覧ください。
俳句の添削例1

原句
せんせいは明日花嫁に春の星
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添削後の俳句
せんせいの明日花嫁よ春の星
季語:春の星〔春〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
「せんせい」のかな書きが、小学校低学年の子が話している雰囲気を伝えていますね。
きっと大好きな「せんせい」なのでしょう。
しかし、原句はその言葉のままなので散文的で報告のような印象になってしまいます。
こうすればもっとよくなる!
助詞を変えてリズムを出してみる。
添削後の印象は…
助詞を変えることで、句にリズムが生まれ、さらに親しみの気持ちのこもった中七「よ」は、うなずきつつ子ども(孫?)の話を聞いている作者の目に映る「春の星」と呼応して、優しい雰囲気を醸し出しています。
俳句の添削例2

原句
病院に抜ける小道や烏瓜
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添削後の俳句
病院へ抜くる小径や烏瓜
季語:烏瓜〔秋〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
原句のままでは「病院」の印象が強く残りますね。
この句で一番伝えたいのは、時折訪れていた場所で、思いがけず「烏瓜」を見つけた驚きなのではないでしょうか。
こうすればもっとよくなる!
上五・中七を穏やかな表現に変え、「抜ける」を「抜くる」、「道」を「径」として、鮮やかに色づいた「烏瓜」をより印象深いものとしてみましょう。
添削後の印象は…
鮮やかに色づいた「烏瓜」がより印象強く残る句になりました。
格助詞の「に」と「へ」は似ているように思われがちですが、「に」はある場所を指し、「へ」はその場所へ向かうニュアンスが強く、少し意味が異なります。
散文ではあまり意識しないこともありますが、俳句のような短い表現では、この微妙な違いが大きな影響を与えることがあります。
俳句の添削例3

原句
沢蟹の横断を待つ遊歩道
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添削後の俳句
沢蟹の横断待てり遊歩道
季語:蟹・沢蟹〔夏〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
この句には優しさがあふれていますね。
ただ、原句の表現は少し散文的であり、情景を述べるだけにとどまっているようです。
こうすればもっとよくなる!
「待てり」と切り、間を作ってみる。
添削後の印象は…
間を作ってみると、「沢蟹の横断」をじっと待っている視線まで感じられるようになりました。
格助詞「を」は、対象や結果、理由・原因などさまざまな意味を持ちます。
短い俳句の中では微妙なニュアンスの違いを表しにくく、なるべく避けたい助詞のひとつです。
俳句の添削例4

原句
星荒ぶるウクライナ穀倉地帯
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添削後の俳句
ウクライナ穀倉地帯星荒ぶる
季語:
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
「字余りはなるべく上五に」という原則に従っていますが、読んでみると6・5・7とぶつぶつ切れて調べ※が悪い印象を受けます。
こうすればもっとよくなる!
言葉の順番を変えてみよう。
添削後の印象は…
5・7・6音することによって心地よく伝わる句になりました。
中句七音の安定感があるからですね。
上五と中七が一塊のフレーズとなり、そのあとの切れによって「星荒ぶる」の字余りも自然に感じられます。
※調べ:俳句における音のリズムや韻律、表現の特徴
俳句の添削例5

原句
春うらら
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添削後の俳句
春うらら微睡む母の爪切れり
季語:
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
季語が穏やかな時間を感じさせ、愛情に満ちた句ですね。
ただ、下五の表現がやや報告的な感じを受けます。
こうすればもっとよくなる!
対象を示す格助詞「を」を省いて、「爪切れり」とより柔らかな調べにしてみよう。
添削後の印象は…
ほんの少しの工夫で、明るくのどかな季語に支えられた「母」への想いが、より伝わる句になりました。
内容にふさわしい調べを大切にすることの大事さが、あらためて感じられますね。
俳句の添削例6

原句
戦時下にクリスマスくる平和くる
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添削後の俳句
戦時下のクリスマスの地平和来よ
季語:クリスマス〔冬〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
「戦時下にクリスマス」という報道に触れ、作者の中で長く願っていた「平和」が、ほんのひととき訪れたように感じられたのでしょう。
その素直な思いが「クリスマスくる平和くる」と詠ませたのだと思います。
ただ、言葉の繰り返しが句の印象をやや甘くしているようです。
こうすればもっとよくなる!
願いの強さを強調してみよう。
添削後の印象は…
実際には、平和はまだ遠い願い。
そこで、「平和来よ」とすることで、願う気持ちがより強く前に出て、平和への切実な想いがまっすぐ読み手に伝わる句になりました。
俳句の添削例7

原句
雪焼けの顔を誇りに山下りる
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添削後の俳句
雪焼けの顔の誇りや山下りし
季語:雪焼(け)〔冬〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
原句は面白い視点を持っていますが、このままだと事実を述べた散文のように感じられます。
こうすればもっとよくなる!
俳句は韻文なので、5・7・5の調べを大切に、切れ字「や」を使ってみよう。
添削後の印象は…
二句を比べてみると、添削による切れ字「や」の効果がよくわかると思います。
「俳句は切れ」とよく言われるのは、調べを生み出す大きな役割があるからです。
「や」を入れることで「誇り」がふくらみ、作者の得意げな様子がより伝わってきますね。
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原句
母打ちし手打ちのうどん夕
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添削後の俳句
母の打つ手打ちのうどんや夕薄暑
季語:薄暑〔夏〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
少し汗ばむようになった夕昏時、「手打ちうどん」のおいしさが伝わってきます。
この情景が思い出の中のことなので、「母打ちし」と過去を表す助動詞「し」を用いたのでしょう。ただ、そうすることで句の印象がやや弱くなってしまいます。
こうすればもっとよくなる!
「打ちし」を「打つ」と変えてみよう。
添削後の印象は…
想いを伝えるには、「夕薄暑」と、「打ち」たてのつやつや輝く「うどん」だけで十分。
まるで目の前で手打ちうどんが打たれているかのよう印象を受ける句になりました。
俳句の添削例9

原句
盛んなり三十年の山ももの実
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添削後の俳句
三十年の山ももの実よ盛んなり
季語:山もも〔夏〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
生育がよい木であれば、三十年も経てば見事な樹形となり、たくさんの実をつけていることでしょう。そのあまりの美しさに、思わず感嘆して「盛んなり」とまず詠みたくなる気持ちはよくわかります。
ただ、その感動が先走ってしまい、かえって状態を報告しているだけのように感じられます。
こうすればもっとよくなる!
言葉の順番を工夫して、読者の想像力をかき立てよう。
添削後の印象は…
添削した句では感嘆を込めた「よ」に支えられた上五・中七からは、「山ももの実」の姿が具体的に浮かび上がり、下五の「盛んなり」が静かに置かれることで、その見事さが自然と想像されるようになりました。
俳句の添削例10

原句
ふるさとの畑から見ゆる遠花火
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添削後の俳句
ふるさとの畑に揚がり遠花火
季語:花火〔夏〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
広々とした「畑から遠花火」を眺める情景を想像できます。
「見ゆる」はきちんとその状況を述べていますが、やや素直すぎて物足りなさを感じるかもしれません。
こうすればもっとよくなる!
言葉のチョイスを変えてみよう。
添削後の印象は…
「畑に揚がり」とすれば、広い広い「畑」の遥かから「揚がる」イメージとなり、都会の「遠花火」とは違った感慨を受ける句になりました。
俳句の添削例11

原句
稲の波トンネル林また林
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添削後の俳句
稲の波トンネル林またトンネル
季語:稲〔秋〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
同じ言葉を繰り返すことで生まれるリズムの面白さを生かした句ですね。
作者は、自分が実際に体験した風景や気持ちを、素直にそのまま表現したのでしょう。
こうすればもっとよくなる!
あえてリズムを壊してみよう。
添削後の印象は…
「また」という言葉が持つ、少しがっかりしたような気分を生かすには、気持ちの良い「林」より、ちょっとがっかり感のある「トンネル」としたほうが面白いかもしれません。
しかも「またトンネル」と下六にすることで、リズムが少しゆるみ、そのがっかり感がより伝わります。
そしてその先に待っている、明るい景色への期待もふくらんできます。
俳句の添削例12

原句
丁寧に紅茶を淹れて
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添削後の俳句
ていねいに紅茶淹れたり桐一葉
季語:桐一葉〔秋〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
ゆったり感が漂う内容ですが、少し硬い印象を受けてしまいます。
こうすればもっとよくなる!
漢字表記をひらがなにしてみる。
添削後の印象は…
漢字表記の「丁寧」を「ていねい」にかな書きにすれば、この上・中十二音がよりやさしく、柔らかい印象になります。
俳句のような短い表現の中では、こんな小さなところにも気を配る、繊細な心づかいが大切になってくるのですね。
俳句の添削例13

原句
街白く人影もなき
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添削後の俳句
街白し人影のなき溽暑かな
季語:溽暑〔夏〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
原句は「街白く」「人影もなき溽暑」であることを説明しているだけの印象を受けます。
こうすればもっとよくなる!
助詞にも注意を向けてみよう。
添削後の印象は…
「街白し」と軽い間を作ることで、読み手の視線はそこにとどまり「街」の「白」さが、さらにくっきりしました。
また、見落としやすいところですが、「も」を添削しています。散文や話し言葉ではさほど重要視されない助詞ですが、短い俳句では助詞の使い方により訴えてくる力が変わります。
焦点を定めることで「人影」が強調され、「溽暑の街」の情景がよりくっきりと浮かび上がってきます。
俳句の添削例14

原句
花火見てあいたあいた口あいた
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添削後の俳句
花火仰ぐあいたあいたよ口あいた
季語:花火〔夏〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
いかにも「花火」の句らしく臨場感がありますね。
原句は「見て」そして「口あいた」という時間の流れを感じさせます。
こうすればもっとよくなる!
よりリズムを整えてみよう。
添削後の印象は…
「花火仰ぐ」とまず上五で言い切り、揚がった瞬間の動作をとらえます。
字足らずの中七には感動のこもる終助詞「よ」を添え、きちんとリズムを整えました。
歌うような弾んだ調べが生まれ、さらに明るいア音で始まる「仰ぐ」と「あいた」の繰り返しにより、「花火」を見上げる群衆の楽しさが伝わる句になりました。
俳句の添削例15

原句
滴りのやがて大河となる
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添削後の俳句
滴りのやがて大河の静寂かな
季語:滴り〔夏〕
改善ポイントと解説
原句から受ける印象は…
一滴の「滴り」を凝視することで、まさに眼前に大景が広がってくるかのような印象を受ける句ですね。ただし、景に対して一句の調べが少し緩い印象を受けます。
こうすればもっとよくなる!
言葉をできるだけそぎ落として、調べをよくしてみよう。
添削後の印象は…
十七音と短い俳句では、できるだけ余分な言葉をそぎ落とすことが大切です。
「やがて」に続くお決まりの言葉として浮かぶ「となる」は、あえて言わなくても読み手に伝わります。その代わりに置かれた切字「かな」は、深い余韻を生み出し、「静寂かな」の一句のあとに広がる静けさや感動をもたらしてくれます。
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