2025年5月
ほむら通信は俳句界における炎環人の活躍をご紹介するコーナーです。
炎環の軸
- 総合誌「俳壇」(本阿弥書店)5月号の特集「夢のありよう―俳句のなかの夢」に石寒太主宰が寄稿し、自作の3句〈一
期 は夢一会 はうつつ旅はじめ〉〈瑠璃 揚羽逢魔 が夢を待ちゐたり〉〈一二三四五六七葉月夢〉を掲げて、〈小生に『夢の浮橋』という、夢ばかりの四十八句を書き下ろした句集がある。一九九八年刊。「炎環」十周年記念に、一日で詠んだ句集である。その中から三句を掲げてみた。一句目。「東 には女無きか男巫 、されば神の男には憑く」。人の生は漂泊である。が、ままならないのが憂 き夢の世。新しい年がやってくるたびに夢と現 に思いをめぐらし終る。「ただ狂へ」と教えたのは『梁塵秘抄』。狂えないのが現実。二句目。きらきら耀 う瑠璃揚羽は、誰を待ちどんな夢をみているのか。三句目。葉月の夢は、一二三四五六七月とつづき、真夏の夢を曳きずっていく。それはすばらしい朱夏の夢か〉と綴っています。 - 結社誌「栞」(松岡隆子主宰)5月号「結社誌管見」(下平直子氏)が「炎環」2024年12月号を取り上げ、石寒太主宰のプロフィール紹介につづき、主宰詠「伏流抄」から《地下壕の奈落の闇へ木枯吹く》《新蕎麦や卓へこぼるる七味の赤》《戦止まざりし底紅底の底》の3句を引いて〈いずれも下五の措辞にインパクトのある句群〉と鑑賞しています。
- 結社誌「くぢら」(中尾公彦主宰)2024年7月号の「現代俳句月評」(三木あゆみ氏)が《山ぶだう賢治のことばこぼれけり 石寒太》を取り上げ、〈宮沢賢治は、岩手県生まれ。農業に携わりながら詩や童話を残した。〈山ぶだう〉に出合った瞬間、賢治の世界に入る。「人間も自然の一部である」「すべてのものは、互いにつながっている」「森羅万象は刻々と変化して消える事もあるが「
真 の力」の世界では、全てが「限りない命」の現れになる」という賢治の考え方、ことばが心耳に響く。〈こぼれけり〉は、とつとつと。息づく山葡萄を通して、今も尚語りかける〈賢治のことば〉。呼応する、深遠の二人〉と鑑賞しました。句は「俳句界」2024年5月号自選30句より、句集『以後』所収。
炎環の炎
- 読売新聞4月11日夕刊の「にほんご」欄に百瀬一兎が、4月の題「会う」のもとに〈春帽子褒められ春帽子褒めて〉〈くちびるのなくなるけはひ松雪草〉〈卒業す右半身は蔭にゐて〉など5句を発表。
- 総合誌「俳句四季」(東京四季出版)5月号「四季吟詠」
・秋尾敏選「秀逸」〈霜柱残された花屋の水栓 松橋晴〉
・秋尾敏選「佳作」〈三日はや山田うどんの客となる 森山洋之助〉
・二ノ宮一雄選「佳作」〈にらめつこゴリラとしてゐる冬の朝 奥野元喜〉 - 朝日新聞3月16日「朝日俳壇」
・大串章選〈受験生老人へ席譲りけり 小澤弘一〉=〈優しい受験生。この「受験生」きっと試験に合格するでしょう〉と選評。 - 日本経済新聞3月29日「俳壇」
・神野紗希選〈中学へ辛夷の並木長きかな 橘ゆふ〉 - 読売新聞4月14日「読売俳壇」
・正木ゆう子選「一席」〈落第を恥と思はず哲学科 谷村康志〉=〈なぜか、何となく、ユーモラス。これが他の科目なら違う印象かも。哲学者は落第ぐらいでは動じない、のか。独創的な思索に耽るあまり、勉強する暇が無かった、のか〉と選評。 - 毎日新聞4月14日「毎日俳壇」
・片山由美子選「一席」〈ボート部に新人五名水温む 谷村康志〉=〈昨今、ボート部の人気はどうなのだろう。新人5人は久々のことで歓迎されているのかもしれない。競技シーズンも近い〉と選評。 - 産経新聞4月17日「産経俳壇」
・宮坂静生選〈家系図に載らぬ愛犬彼岸西風 谷村康志〉 - 日本経済新聞4月26日「俳壇」
・横澤放川選「一席」〈長生きを詫びてひたすら春田打 谷村康志〉=〈お幾つになられたか存知あげないが、加齢というはなにかとこんな詫び心を生みもするのかな。それでもの春田打とは磊落でいい〉と選評。 - 東京新聞4月27日「東京俳壇」
・石田郷子選〈ビストロの並ぶ運河や春日傘 谷村康志〉 - 毎日新聞4月28日「毎日俳壇」
・片山由美子選〈燕来る街に空き家がまたひとつ 谷村康志〉=〈空き家が目立つ通りに今年もツバメがやってきた。飛び交う姿が街を活気づけるかのよう〉と選評。 - 産経新聞5月1日「産経俳壇」
・宮坂静生選〈万愚節百姓の子が商社マン 谷村康志〉 - 日本経済新聞5月3日「俳壇」
・神野紗希選〈ホスピスに絵本の書棚花の窓 谷村康志〉 - 毎日新聞5月5日「毎日俳壇」
・井上康明選〈ごつごつの冬木ごつごつの私 岡良〉 - 日本経済新聞「俳壇」
・横澤放川選〈算盤を捨てて定年胡瓜蒔く 谷村康志〉 - 愛媛新聞4月18日のコラム「季のうた」(土肥あき子氏)が、《さうぢやないかうなんだよと囀れり 三輪初子》を取り上げ、〈鳥たちの普段の鳴きようは地鳴きと呼ばれ、比較的単調なもの。「囀り」とは、繁殖期を迎えた鳥の複雑な抑揚を交えた独特の鳴き声。空から降り注ぐ複数の声に耳を傾けると、まだ節回しの幼いものも聞き取れ、たたみかけるように別の美しい鳴き声が続く。囀りはメスへのアピールと縄張りの宣言だが、もうひとつ、後輩への指導という役割も持ち合わせているようにも思われる〉と鑑賞。句は句集『檸檬のかたち』より。
- 結社誌「栞」(松岡隆子主宰)5月号「結社誌管見」(下平直子氏)が「炎環」2024年12月号を取り上げ、「炎環集」より《ポケットに吾亦紅挿し競技場 榊はたはた》《天高し受話器向かうの百二歳 森ゆみ子》《星月夜猫の家族の円き影 涼風たゑ》の3句を引き、〈三句とも写生の目の働きが個性的で、句に独自の魅力がある〉と寸評。「梨花集」からは《NOといふ勇気があるか文化の日 山口紹子》《秋の雲ABCのビスケット 丑山霞外》《切れのなき俳句のごとき夜長かな 谷村鯛夢》、新人賞記念作品「北巨摩」より《星死して深雪となりし朝かな 大和田響子》、巻頭作家作品「バラード」から《栗の殻硬し卓の上の帰心 甲斐りん》、特別作品「ヘアピンカーブ」から《曼珠沙華追へばヘアピンカーブかな 上山根まどか》を紹介。「炎環」誌について〈同人・会員の俳句を始め、学びも読み物も充実の一誌〉と評価。
- 総合誌「俳句」(角川文化振興財団)5月号付録『季寄せを兼ねた俳句手帖2025夏』が《明日ありと信ずれば混む冷蔵庫 関根誠子》《ふるさとのおほきな音の扇風機 齋藤朝比古》を採録。