2025年度 炎環四賞
第三十回「炎環新人賞」記念作品
百瀬 一兎
独り
- 鼻歌のサビの高まり鳥渡る
- 秋風や十年前のAボタン
- 蓑虫や手相を知らぬ吾の両手
- 椎茸焼く窓に夕べのうすあかり
- 秋気澄む妻は食べない作り置き
- 親だとか子だとか秋の蛇だとか
- 考へてをらぬ頰杖小鳥くる
- 子の服を畳む独りや菊日和
- 秋の灯や録画を消してゆく無音
- 人殺すベティ・デイヴィス秋の蠅
- 浴槽の底仲秋の闇に栓
- 牛丼を提げペガススの青きかな
- 良夜なりトイレに鍵をかけぬまま
- 虫のこゑ仮の旅程を立てにけり
- カフェオレのつれなきうすさ轡虫
- 朝寒へビン缶ペットボトル捨つ
- 長月や鼓動がひとつだけの部屋
- 枝豆や生きる理由のひとつ増え
- 妻と子の帰り待ちをり酔芙蓉
- おかへりとただいま同時月さやか
受賞のことば
この度は新人賞という身に余る賞をいただき、誠にありがとうございます。推挙していただいた石寒太主宰、そして推薦していただいた同人の皆様に感謝申し上げます。
炎環に入会して2 年弱、それまで独りよがりに作句していたころの俳句から成長を強く感じております。これからも炎環のつながりを大切にしていきたいです。
私は俳句についてのインプット、アウトプットがまだ圧倒的に足りないと自覚しています。そのような中で新人賞をいただくことは、大変畏れ多く、プレッシャーものしかかっております。これを皆様からの激励と考え、炎環新人賞にふさわしい俳人となれるよう一層励んでまいります。
これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。